2025-02

フッ素は体に悪いの?フッ素の安全性について解説

デンタルニュース担当スタッフ、歯科衛生士の平野です。

「フッ素って体に悪いって聞いたけど、歯磨き粉で使ってて大丈夫?」
「禁止されている国もあるんでしょう?」

歯医者に行くとフッ素をおすすめしているところがほとんどだと思います。

また、市販の歯磨き粉にもほとんどフッ素が含まれています。

一方で、フッ素は「危険」「体に悪い」という意見を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

結局体に良いの?悪いの?と気にされている方もいらっしゃるかもしれません。

結論からいうと、虫歯予防のためのフッ素の活用は安全であり、効果も実証されています。

しかし、誤った使い方をすると危険な場合もあるのは事実です。

この記事では、フッ素が体に悪いと言われる理由や、フッ素の安全性について詳しく解説しています。

また、フッ素の効果的な使い方についてもまとめているので、フッ素との付き合い方に悩まれている方は参考にしてみてください。

フッ素で虫歯を予防するイメージ

Ⅰ フッ素とは

「フッ素」とは、自然界に存在する物質の一つで、土壌や海水などに含まれています。土の中で育つ野菜や、海水に生息している魚介類、そして人間にも含まれているのです。

そのため、フッ素=体に悪いというわけではありません。

Ⅰ-1.フッ素は毒?体に悪いと言われる理由

①元素のフッ素は毒

元素単体の状態のフッ素は、毒です。

しかしフッ素には酸化作用があるので、すぐに化合物となり、ほぼ毒の状態では存在できません。

歯医者でフッ素と呼ばれて使われているのは、元素の組み合わせでできたフッ化ナトリウムです。

元素単体と、元素の組み合わせでできたものは全く別のものになります。

②急性中毒

フッ素の急性中毒は、大量のフッ素を一気に摂取することによって起こります。

吐き気や嘔吐、腹痛、下痢、けいれんなどの症状が現れます。

中毒を起こす量はフッ素の濃度や個人の体重によって変わってきますが、大人(60kg)であれば1450ppmの歯磨き粉を80g程度飲むと中毒症状が出る可能性があります。

歯磨き粉の1回の使用分が1〜1.5gと言われているので、80gとは相当な量です。

なかなかその量を飲む機会はないと思います。

体重15kgのお子様だと、子供用歯磨き粉を1本飲むと中毒症状が出る可能性があります。

子供用の歯磨き粉はお子様の好みの味になっていることが多いので、手の届く範囲に置くのは避け、誤飲に気をつけましょう。

しかし実際に、私が10年以上歯科の診療に携わってきて、フッ素の急性中毒になったという話は聞いたことがありません。

しっかり管理に注意していれば、日常生活で使用する歯磨き粉のフッ素量で急性中毒になる心配はないでしょう。

③慢性中毒(フッ素症)

慢性中毒とは、長期間にわたって過剰なフッ素を摂取することで起こります。

歯が出来あがるまでの時期(生まれてから7、8歳まで)に、過剰なフッ素を長期間摂取すると、歯の表面に白い斑点などが見られます。

私の知り合いの歯医者の先生に、歯のフッ素症になってしまっている先生がいます。

ご実家が歯医者で、お父様がフッ素を頻繁に塗りすぎたそうです。

決められた定期検診の頻度であればそのような心配はないですが、かかりつけの歯医者がなかったり、かかりつけの歯医者以外でフッ素を塗る機会がある場合は、「いつ塗ったかな?」とならないようにしっかり把握しておきましょう。

Ⅰ-2.フッ素の安全性

①世界各国で推奨されている

フッ素の使用は、世界保健機(WHO)や、アメリカ歯科医師会などの国際的な医療機関でも推奨されています。

また、「ヨーロッパではフッ素が禁止されている」と聞いたことがある方も居るかもしれませんが、ヨーロッパでは虫歯予防のためのフッ素は使用されています。

国によっては水道水へのフッ素の添加をしていませんが、歯磨き粉にはフッ素が添加されています。

②適切な濃度や頻度での使用が大切

歯科で使用されるフッ素は危険ではありませんが、前述したように、適切な使用頻度や量を守らなければ体に悪影響が出てしまいます。

これはフッ素に限ったことだけでなく、薬や食品でも同じことが言えます。

薬は、決められた容量であれば効果的ですが、大量に摂取すると体に害がある場合があります。

日常的に摂取している醤油や塩なども、大量に摂取すると死に至ると言われています。

過剰摂取にならないよう注意し、適切な方法で使用することが大切です。

フッ素を使用したデンタルケア用品

Ⅱ フッ素の効果的な使い方

フッ素を上手に活用することで、虫歯予防の効果を得られます。

では、フッ素を上手に活用するには、どのような方法があるのでしょうか?

日常的に取り入れられるフッ素の使用方法についてまとめていますので、参考にしてみてください。

Ⅱ-1.フッ素を使用する機会

①フッ化物配合歯磨剤

毎日の歯磨きの際に、フッ素入りの歯磨き粉をつけて使用します。

年齢に応じた適切な濃度と量は、

5歳以下:1,000ppm以下の濃度、米粒大

6歳~大人:1,450ppmの濃度、1~2cm

となっています。

使用後に大量のうがいをすると、フッ素の効果が弱まってしまうので、うがいは少量の水で1回のみ行うようにしましょう。

市販の歯磨き粉のほとんどにフッ素が含まれているので、1番日常に取り入れやすい方法だと思います。

②フッ化物歯面塗布

歯医者や、市区町村の乳幼児検診などで、フッ素を塗ってもらう方法です。

高濃度のフッ素を歯の表面に塗ります。

1回の塗布だけでは効果は得られず、年2回以上継続して塗布することで虫歯予防に効果的です。

③フッ化物洗口

フッ素の含まれる洗口液で、1分程度ブクブクうがいをします。

毎日法(週5回法)と、週1回法があります。

学校などで集団で行われていますが、最近は市販でも洗口液が販売しており、おうちで手軽に行うことができます。

ブクブクうがいができるようになる4歳以上の使用が推奨されています。

Ⅱ-2.フッ素の利点

①虫歯予防

フッ素には、虫歯菌の活動を抑える効果があります。

通常、虫歯菌が作り出す酸によって、歯が溶けてしまい虫歯ができます。

フッ素はその虫歯菌の働きを弱め、酸が作られるのを抑制します。

②再石灰化を促進する

再石灰化とは、溶けた歯を元に修復する働きのことを言います。

虫歯菌によって酸が作られると、その酸によって歯のカルシウムやリンが溶け出します。これが「脱灰」と言われる働きです。

それに対して、口の中の唾液が溶け出したカルシウムやリンを歯の表面に戻す「再石灰化」をしています。

口の中では常に「脱灰」と「再石灰化」が行われているのです。

フッ素は、その再石灰化の働きを促進する効果があります。

③歯質を強化する

フッ素は、歯の表面のエナメル質を強化し、酸に溶けにくい強い歯にする効果があります。

歯質が強化されることで、虫歯の発生を抑制することができ、虫歯になりにくい歯になります。

歯の再石灰化を促進するイメージ

Ⅲ まとめ

フッ素の中毒症状などを知り、怖いと感じる方も居るかもしれません。

しかし、フッ素は濃度や量を適切に使用すれば、安全で効果的な虫歯予防の方法です。

正しい情報を選択して、フッ素を使用するかどうか、考えていきましょう。

ただし、「フッ素を塗っているから絶対に虫歯にならない」というわけではありません。

虫歯菌が多ければ、フッ素を塗っても酸が作られてしまい歯が溶けて虫歯となってしまいます。

虫歯にならないためには、毎日の歯磨きを丁寧に行うことが大切です。

毎日の歯磨きをしっかり行った上で、フッ素を取り入れて虫歯予防の効果を高めていきましょう。

2025-02-14 | Posted in デンタルニュースComments Closed 

 

虫歯にならない人の特徴は?改善方法も紹介

デンタルニュース担当スタッフ、歯科衛生士の平野です。

「ちゃんと歯磨きしているのに、すぐ虫歯になる」
「同じようにケアしていても虫歯にならない人は、自分と何が違うんだろう」

そう思ったことはありませんか?

実は虫歯になりやすさは個人差があり、世の中には虫歯になりやすい人となりにくい人がいます。

虫歯は歯だけでなく、お口の中の環境や生活習慣などの要因によって大きく変わってきます。

お口のケアをしっかりしていても何回も虫歯になる人もいれば、しっかりケアをしているわけではないのに虫歯にならないという人もいるのです。

 

私は虫歯になりやすく、毎日フロスまでしっかりしていますが、検診で見てもらうと小さな虫歯や虫歯になりそうなところが見つかるということが多々ありました。

しかし、知人の歯医者の先生は「実はフロスなんてほとんどしたことがない」とおっしゃっていましたが、虫歯にならないそうです。

皆さんの身近にも、特別なケアをしているわけではないのに虫歯にならない人がいらっしゃるのではないでしょうか。

 

この記事では、虫歯にならない人の特徴を解説しています。

虫歯のなりやすさは、体質によるものもあればご自分で気をつけて改善できることもあるので、虫歯になりやすいと感じている人は参考にしてみてください。

虫歯にならない人

虫歯にならない人の生理的特徴

生理的特徴とは、身体の機能や状態に関する特徴です。

自分ですぐにコントロールできる部分ではないですが、中には意識することで改善できることもあります。

Ⅰ-1.唾液の分泌量が多い

①唾液の作用

唾液には「自浄作用」「抗菌作用」「再石灰化」など、虫歯を抑制する作用がたくさんあります。

唾液の分泌量が多い人は、これらの作用によりお口の中が清潔に保たれ、虫歯になりにくくなります。

②唾液の分泌を多くするには

唾液を増やすためには、食事の時にしっかりとよく噛んで食べることが大事です。

よく噛むことで、唾液腺が刺激され、唾液の分泌が促されます。

Ⅰ-2.唾液の性質がサラサラしている

①唾液の種類

唾液には2種類あり、「ネバネバした唾液」と「サラサラした唾液」があります。

ネバネバした唾液は、お口の中が乾きやすく虫歯リスクが高いですが、サラサラした唾液はリラックス状態の時に分泌され、お口の中の汚れを洗い流してくれるので虫歯予防に効果的です。

②唾液をサラサラにするためには

緊張していたりストレスを感じていると唾液がネバネバしやすいので、日常的にそういった機会が多い方は、リラックスできる時間を増やしてみましょう。

Ⅰ-3.歯質が強い

①歯質が強い人

歯質は人によって違い、歯質が強い人は、虫歯菌が放出する酸に対する抵抗力が高いです。

そのような方は、エナメル質が溶けにくく、結果的に虫歯リスクが低くなります。

②歯質が弱い人

歯の表面のエナメル質が薄い「エナメル質形成不全」などで先天的に歯質が弱い人や、乳歯や生えたばかりの永久歯などの歯質が弱い時期の歯は、虫歯になりやすいです。

③歯質を強くするには

まだ歯が生えていない子供の場合は、歯質が作られる時期に、歯の成分であるカルシウムをしっかり摂取することで、歯質を強くすることができます。

歯質が作られる時期は、乳歯の場合は妊娠3〜4ヶ月頃、永久歯の場合は乳幼児期〜小学校低学年頃と言われています。

歯質が強く虫歯にならないイメージ

Ⅱ 虫歯にならない人の口腔内環境

お口の中の環境は体質と違い、お口のお手入れをしっかりしたり矯正治療で歯並びを良くすることで、自分で変えることができます。

Ⅱ-1.虫歯菌の数が少ない

①虫歯菌の数は幼少期に決まる

お口の中の虫歯菌の数が少ない人は、虫歯になりにくいです。

虫歯は遺伝などではなく細菌感染なので、小さい頃に虫歯菌を保有する親と同じ食器を使用したり、食べ物の口移しなど何らかのタイミングで感染します。

2歳半から3歳までの時期に虫歯菌に触れる機会が少なかった人は、その後の人生でも虫歯になりにくくなることがわかっています。

そもそも虫歯とは、虫歯菌が飲食物などの糖分を分解して放出する酸で、歯が溶かされることにより起こります。

虫菌菌はほとんどの人のお口の中に存在する常在菌ですが、虫歯になりにくい人はその細菌の数が少なかったり、存在していない場合もあるため、虫歯になるリスクが低くなります。

冒頭で書いた、「実はフロスなんてほとんどしたことがない」知人の歯医者の先生は、恐らくお口の中の虫歯菌が少ない方なのでしょう。

②虫歯菌を減らす対策

まだ3歳未満の子供が虫歯菌に触れる機会を少なくするためには、親との食器の共有や口移し、糖分の多い食事を控えることが大切です。

一度虫歯菌に感染した場合、全ての菌を除去することはできませんが、丁寧な歯磨きを行うことや歯医者のクリーニングを受けることで虫歯菌の数を減らすことは可能です。

Ⅱ-2.歯並びが整っている

①歯並びが良いと磨きやすい

歯並びが悪い人は歯が重なっている部分や引っ込んでいる部分に歯ブラシの毛先が届きにくく、磨き残しが多くなってしまうため、虫歯リスクが高くなります。

歯並びが良い人は歯磨きがしやすく、隅々まで清潔にすることができるため、虫歯のリスクを減らすことができます。

②噛み合わせの影響

歯並びが良いと噛み合わせも良くなるため、よく噛んで食事ができ、唾液の分泌もよくなります。

虫歯菌が少ない歯

Ⅲ 虫歯にならない人の生活習慣

体質だけではなく、日々の生活の過ごし方も虫歯の原因に直結します。

こちらは今すぐに改善できる部分もあるので、虫歯になりやすさが気になっている方は参考にしてみてください。

Ⅲ-1.丁寧に歯磨きする

①補助的清掃用具を使う

虫歯予防にとって、基本となるのが丁寧な歯磨きです。虫歯菌は歯と歯の間や、歯の溝などの細かいところに入り込むため、歯ブラシだけでなくフロスや歯間ブラシなどの補助的清掃用具の使用も大切です。

②フッ素を取り入れる

多くの歯磨き粉に含まれるフッ素は、歯を強くし虫歯を予防する効果があるので、虫歯になりやすさが気になる方は、フッ素入りの歯磨き粉を使用しましょう。

Ⅲ-2.甘いものをあまり食べない

①糖分は虫歯菌のエサ

砂糖や甘い食べ物をほとんど食べない人は、虫歯になるリスクも低いです。

糖分は虫歯菌の主なエサであるため、甘いものをたくさん摂取してしまうと、お口の中に虫歯菌による酸が増え、虫歯になりやすくなってしまいます。

②お口に止まりやすいものを控える

お口の中に糖分が長時間留まることで、細菌が増殖しやすい環境になります。

飴やガムなど長時間お口の中に留まりやすいものは、虫歯予防効果のあるキシリトール入りのものにするなど気をつけましょう。

また、歯にくっつきやすいキャラメルやソフトキャンディー、ヌガーなどを摂取した後は、丁寧な歯磨きを心がけましょう。

以前担当させていただいていた患者様で、磨き残しが少なく綺麗で歯磨きは上手なのに、しょっちゅう虫歯になってしまう方がいました。

よくよく話を聞いてみると、夜に歯磨きをした後、寝る直前に飴を舐める習慣があることが発覚しました。

いくら日頃の歯磨きを丁寧にしていても、糖分を摂取した後に磨かないと、本当に虫歯になりやすいのだなと実感しました。

Ⅲ-3.よく噛んで食べる

①唾液の分泌が良くなる

食事をよく噛むことで唾液の分泌が促進され、お口の中の自浄作用が高まります。

前述した通り、唾液には虫歯を抑制する成分がたくさん含まれています。そのため、よく噛むことで、虫歯のリスクを軽減することができます。

②食べ物の種類

柔らかい食べ物ばかりを摂取していると噛む回数が減ってしまうため、適度に硬い食べ物も摂取するよう心がけましょう。

Ⅲ-4.鼻呼吸をしている

①口呼吸による影響

口呼吸をしていると、お口の中が乾燥状態になるため、唾液の「自浄作用」「抗菌作用」「再石灰化」などの働きが低下し、虫歯になりやすい環境になってしまいます。

口呼吸によって舌の位置が下がると歯並びや顎の発達にも影響があるため、まだ歯が生えそろっていなかったり顎の成長が終わっていない子供の場合は注意をしましょう。

②鼻呼吸による影響

鼻呼吸をしている人は、お口の中が乾燥しにくく、唾液の働きによって細菌が繁殖しづらいため、虫歯リスクが低くなります。

鼻呼吸をしている人

Ⅳ まとめ

以上の特徴を持つ人は虫歯になりにくいですが、こういった特徴に当てはまらないからといって必ず虫歯になるわけではありません。

毎日の丁寧なセルフケアと歯科医院での定期的なプロケアが、虫歯予防には重要です。

定期的に検診やプロの口腔ケアを受けることで、初期虫歯の早期発見や、ご自身にあった正しい歯磨き方を身につけることができます。

2025-02-07 | Posted in デンタルニュースComments Closed